こんにちは、たけもとです。
本記事では、3Dプリンターのフィラメント素材の1つ、PETGについて解説していきます。
印刷のしやすさと丈夫さを合わせ持つ優れた素材ですが、使用や保管についての注意点もあり、メリットやデメリットについて見ていきたいと思います。
はじめに
PETGの概要
素材の特徴
PETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール)は、ペットボトルでおなじみのPET(ポリエチレンテレフタレート)を改良した素材で、PETよりも加工がしやすく、強度や透明度を合わせもつ点が特徴です。
家庭用の3Dプリンターで主に使用される素材としてはPLAやABSが中心となっていますが、このPETGが加工のしやすさと強度の高さから、現在注目されるようになっています。
身近な例
身近に使われている例としては、化粧品や洗剤などの容器、図書館の利用カードなどのパーツ類に使用されています。
ポイント
先に本記事で触れるPETGのポイントについて整理します。
メリット・特徴
・強度、耐衝撃性が高い
・印刷がしやすい
・耐熱性が高い
・光沢感、透明感のある表現
デメリット・注意点
・吸湿性が高い(糸引きの発生)
・表面の傷つきやすさ
・紫外線に弱い
主な用途
・治具、工具
・ギア、パーツ類
・容器、ケースなどの日用品
それでは以下、詳しいところについて見ていきます。
解説
メリット・特徴
強度、耐衝撃性が高い
PETGの特徴の一つが、強度や耐衝撃性が高いことです。
主要なフィラメントの一つであるPLAに比べてもこの耐衝撃性が強みとなるため、より丈夫さ・頑強さが求められるシーンで活躍します。
身近な例でいうと、治具やギアなどの可動部品などで用いられています。

印刷がしやすい
上記の丈夫さでいうと、ABSも同じように丈夫さが特徴の素材になります。一方で、ABSは熱収縮による変形が生じやすく、特に大き目の印刷物を造形すると、反りが目立ってしまうところが課題になっています。
PETGは丈夫さがありながらも、ABSに比べても熱収縮が少なく、印刷の精度が安定しています。
耐熱性が高い
印刷のしやすい素材であるPLAの課題の一つが、耐熱性の低さでした。(60℃を超えたところから変形しやすくなってしまう)
PETGは70℃〜80℃程度までの耐熱性があり、より高い温度まで、変形せずに形状を保つことができます。
光沢感、透明感のある表現
光沢感・透明感があるのも特徴の一つです。
透明のフィラメントを使うことで、色付きのフィラメントにはない表現をすることができます。
身近な例として、化粧品やシャンプーなどのボトルにも使用されています。

デメリット・注意点
吸湿性が高い(糸引きの発生)
湿気を吸いやすい点が課題になります。
吸湿してしまったフィラメントを使用すると、糸を引いたり、うまく造形ができないケースに繋がってしまいます。使用後には容器に保管したり、フィラメントケースの中に除湿剤を入れて使用する等の対策が求められます。
また、糸引きについては、印刷時の温度設定も、使用するPETG素材に適ったものになるよう、しっかり調整したいところです。
表面の傷つきやすさ
もう1点、表面が傷つきやすい点が注意点になります。
光沢感や透明感が特徴でしたが、印刷物を使用する環境について考慮の上、印刷物に使うかどうかを検討したいですね。
紫外線に弱い
紫外線には弱く、長時間紫外線にさらされると、変色したり劣化する可能性があります。
屋外での使用には向かないほか、保管場所にも気を付けたいところです。
補足
参考商品
①Polymaker PolyLite PETG
カラーラインナップが豊富です。スプール(糸巻き)は紙製で処分も容易。オーソドックスな使用感。推奨印刷速度は50mm/sとのことで、印刷時には意識しておきたい。

②Bambu Lab PETG
Bambu Labの純正品で、RFIDにも対応し、Bambu Labのスライサーでの印刷の設定が容易。最大300mm/sの速度に対応。PETGの特徴の丈夫さに加えて、屋外使用対応がアピールポイントで、プランターポットや鳥かごといったアイテムにも対応。

③Creality PETG フィラメント 透明
PETGの特徴の一つである、光沢感・透明感を生かすことのできる透明フィラメント。

フィラメントごとの特徴一覧
Bambu Lab A1 Miniに対応している4種類のフィラメントを比較した表が以下になります。
PLA (ポリ乳酸) | PETG (ポリエチレンテレフタレートグリコール) | TPU (熱可塑性ポリウレタン) | PVA (ポリビニルアルコール) | |
メリット・特徴 | ・手軽に印刷が可能 ・印刷の寸法が安定する ・コストが安い | ・強度、耐衝撃性が高い ・印刷がしやすい ・耐熱性が高い ・光沢感、透明感のある表現 | ・柔軟性が高い(曲げられる) ・耐摩耗性、耐衝撃性が高い | 水に溶ける →複雑な造形物の印刷に役立つ |
デメリット・注意点 | ・耐熱性が低い ・耐衝撃性が低い ・表面処理や塗装にあまり向かない | ・吸湿性の高さ(糸引きの発生) ・表面の傷つきやすさ ・紫外線に弱い | ・造形が少し難しい ・吸湿性が高い(糸引きの発生) | ・湿気にかなり弱い ・コストが高い ・サポート材の使用の知識が必要 |
用途 | ・雑貨 ・玩具、模型 ・大型の印刷物 →汎用性が高い | ・治具、工具 ・ギア、パーツ類 ・ケースなどの日用品 →強度が求められるもの | ・ケース類(スマートフォンカバー等) ・緩衝材、キャップ、パッキン ・スタンプ →丈夫さと柔軟性が求められるもの | サポート材 →他のフィラメントと組み合わせて、PVA素材部分のみ溶かすことで、複雑な形状を印刷可能 |
価格 | 安価 例)1kg:2000~4000円 | やや高価 例)1kg:2500~5000円台 | やや高価 例)1kg:2500~4000円台 | 高価 例)500g:3000~5000円台 |
強度 | あまり高くない | 高め(丈夫) | 高め(柔軟) | あまり高くない |
対応温度目安:ノズル | 190~220℃ | 220~250℃ | 210~230℃ | 190~220℃ |
対応温度目安:ベッド | 0~60℃ | 50~80℃ | 0~60℃ | 0~60℃ |
こちらについては、下記の記事でまとめています。
まとめ
以上、フィラメントについての解説でした。改めて、ポイントを整理します。
メリット・特徴
・強度、耐衝撃性が高い
・印刷がしやすい
・耐熱性が高い
・光沢感、透明感のある表現
デメリット・注意点
・吸湿性の高さ(糸引きの発生)
・表面の傷つきやすさ
・紫外線に弱い
主な用途
・治具、工具
・ギア、パーツ類
・ケースなどの日用品
印刷のしやすさではPLAも使用候補になりますが、丈夫さを求める場合はPETGの方が適切と言えるでしょう。一方でPLAに比べて吸湿性が高いなどの課題を持ち合わせているため、用途や環境に応じて、使い分けたいですね。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。よろしければ、下記の関連記事もどうぞご覧ください。
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