こんにちは、たけもとです。
本記事では、3Dプリンターのフィラメント素材の1つ、PVAについて解説していきます。
水溶性が特徴のフィラメントであり、他の素材と組み合わせることで、複雑な形状の印刷物を造形することができます!
目次[表示]
はじめに
概要
素材の特徴
PVA(ポリビニルアルコール)は、水溶性を持つ点が大きな特徴の素材です。
その水に溶ける性質を生かして、3Dプリンターの用途上では、単体での造形には使われず、もっぱらサポート材として利用されます。
身近な例
身近に使われている例としては、ジェルボール洗剤のフィルム、洗濯のりや木工用ボンドなどの接着剤が挙げられます。
ポイント
先に本記事で触れるPVAのポイントについて整理します。
メリット・特徴
水に溶ける
→複雑な造形物の印刷に役立つ
デメリット・注意点
・湿気にかなり弱い
・コストが高い
・サポート材の使用の知識が必要
主な用途
サポート材
→他のフィラメントと組み合わせて、PVA素材部分のみ溶かすことで、複雑な形状を印刷可能
それでは以下、詳しいところについて見ていきます。
解説
それでは、ポイントごとに詳しく見ていきます。
メリット・特徴
水に溶ける→複雑な形状の印刷ができる
PVAの大きな特徴として、水に漬けておくと溶ける性質を持ちます。ジェルボール洗剤のフィルムが分かりやすい例になりますが、水に漬けておくことで、徐々に形をなくしていきます。
3Dプリントにおいて、形状が複雑などの場合にはサポート材を使用することが求められます。
PVA以外の素材でもサポート材として使うことはできますが、例えば、
・筒状の印刷物の内部のサポート材
・複雑な形状で、カーブ部分や奥まったところのサポート材
上記のような部分に使用したサポート材は、手で取り除くのが非常に難しいです。
その点、PVAをサポート材として使用することで、水に漬けることでサポート材部分を取り除けます。
つまり、手や指が届かないところにサポート材を設けても除去することが容易で、複雑な印刷物を成形できるのが、PVA特有のメリットとなります。
デメリット・注意点
湿気にかなり弱い
水に溶ける性質が強みになる反面、湿気を吸いやすい点が課題になります。
吸湿してしまったフィラメントを使用すると、糸を引いたり、うまく造形ができないケースに繋がってしまいます。使用後には容器に保管したり、フィラメントケースの中に除湿剤を入れて使用する等の対策が求められます。
コストが高い
後述の参考商品で商品例を挙げていますが、PLAやPETGなどの他の素材に比べると、コストが高いです。
使う用途は限られていますが、しっかり除湿して保存したり、印刷で扱うスキルや知識を得て、なるべくロスを抑えて使用したいところですね。
サポート材の使用の知識が必要
どの部分にどれだけ使用するか、設定・調整する知識が求められます。
特に、複雑な形状の印刷物にこのPVAを使用するので、入り組んだ場所ごとに適切にサポート材を設けたり、溶け具合に応じてサポート材の密度を調整したりする知識やスキルが必要になります。
補足
参考商品
Bambu Lab PVA
Bambu Labの純正品で、RFIDにも対応し、Bambu Labのスライサーでの印刷の設定が容易です。

フィラメントごとの特徴一覧
Bambu Lab A1 Miniに対応している4種類のフィラメントを比較した表が以下になります。
PLA (ポリ乳酸) | PETG (ポリエチレンテレフタレートグリコール) | TPU (熱可塑性ポリウレタン) | PVA (ポリビニルアルコール) | |
メリット・特徴 | ・手軽に印刷が可能 ・印刷の寸法が安定する ・コストが安い | ・強度、耐衝撃性が高い ・印刷がしやすい ・耐熱性が高い ・光沢感、透明感のある表現 | ・柔軟性が高い(曲げられる) ・耐摩耗性、耐衝撃性が高い | 水に溶ける →複雑な造形物の印刷に役立つ |
デメリット・注意点 | ・耐熱性が低い ・耐衝撃性が低い ・表面処理や塗装にあまり向かない | ・吸湿性の高さ(糸引きの発生) ・表面の傷つきやすさ ・紫外線に弱い | ・造形が少し難しい ・吸湿性が高い(糸引きの発生) | ・湿気にかなり弱い ・コストが高い ・サポート材の使用の知識が必要 |
用途 | ・雑貨 ・玩具、模型 ・大型の印刷物 →汎用性が高い | ・治具、工具 ・ギア、パーツ類 ・ケースなどの日用品 →強度が求められるもの | ・ケース類(スマートフォンカバー等) ・緩衝材、キャップ、パッキン ・スタンプ →丈夫さと柔軟性が求められるもの | サポート材 →他のフィラメントと組み合わせて、PVA素材部分のみ溶かすことで、複雑な形状を印刷可能 |
価格 | 安価 例)1kg:2000~4000円 | やや高価 例)1kg:2500~5000円台 | やや高価 例)1kg:2500~4000円台 | 高価 例)500g:3000~5000円台 |
強度 | あまり高くない | 高め(丈夫) | 高め(柔軟) | あまり高くない |
対応温度目安:ノズル | 190~220℃ | 220~250℃ | 210~230℃ | 190~220℃ |
対応温度目安:ベッド | 0~60℃ | 50~80℃ | 0~60℃ | 0~60℃ |
こちらについては、下記の記事でまとめています。
まとめ
以上、PVAフィラメントについての解説でした。改めて、ポイントを整理します。
メリット・特徴
水に溶ける
→複雑な造形物の印刷に役立つ
デメリット・注意点
・湿気にかなり弱い
・コストが高い
・サポート材の使用の知識が必要
主な用途
サポート材
→他のフィラメントと組み合わせて、PVA素材部分のみ溶かすことで、複雑な形状を印刷可能
もっぱらサポート材として使用する素材であるPVA。複雑な形状の印刷物を作りたい場合に、導入を考えたい素材でした。
それでは最後までご覧いただき、ありがとうございました。よろしければ、下記の関連記事もどうぞご覧ください。
関連記事
・PLAについて|印刷のしやすさが特徴!3Dプリンタ導入時にまず検討したい素材
・PETGについて|丈夫さと印刷のしやすさを合わせ持つ。耐熱温度の高さも特徴
・TPUについて|柔軟性・耐摩耗性・耐衝撃性が特徴。印刷時は工夫が必要
・PVAについて|水溶性が特徴!サポート材として複雑な形状の造形に【本記事】
Bambu Lab A1 Mini で使用できるフィラメントについて↓