こんにちは、たけもとです。
本記事では、3Dプリンターのフィラメント素材の1つ、TPUについて解説していきます。
ゴム系の素材で、柔軟性・耐摩耗性・耐衝撃性が求められる場面で活躍する素材です。一方で印刷時にはやや工夫が必要となります。ここでは、TPUのメリット、デメリットや用途について見ていきます。
はじめに
概要
素材の特徴
TPUは、熱可塑性ポリウレタンと呼ばれる、ゴムのような弾力性を持つプラスチック素材です。
柔軟性、耐摩耗性、耐衝撃性に優れており、曲げや摩擦が生じる箇所、クッション性が求められるような部分で、使用されるイメージです。
身近な例
身近に使われている例としては、スマートフォンケース、靴底、自動車のバンパー等の部品などが挙げられます。
ポイント
先に本記事で触れるTPUのポイントについて整理します。
メリット・特徴
・柔軟性が高い
・耐摩耗性、耐衝撃性が高い
デメリット・注意点
・造形が少し難しい
・吸湿性が高い(糸引きの発生)
主な用途
・ケース類(スマートフォンカバー等)
・緩衝材、キャップ、パッキン
・スタンプ
それでは以下、詳しいところについて見ていきます。
解説
それでは、ポイントごとに詳しく見ていきます。
メリット・特徴
柔軟性が高い
TPUの特徴の一つが、この柔軟性の高さです。
一般的なプラ素材は形状を変えることができませんが、TPUはゴム系の材料であり、折り曲げたり、対象となるモノに密着させたり、といった用途で使用することができます。
スマートフォンケースは、その柔軟性と、下記の耐衝撃性を生かした、TPU素材の代表的な用途の一つになります。

耐摩耗性、耐衝撃性が高い
素材の柔らかさを生かして、耐衝撃性・耐摩耗性が求められるところにも使われます。
この性質については、靴底のラバー部分が、イメージしやすい用途になります。その他、キャップやパッキンといった箇所にも用いられます。

デメリット・注意点
造形が少し難しい
素材の柔らかさが印刷難度の高さに繋がっています。
まず、層をうまく積み上げられず、崩れる可能性があるところが、他の素材に比べて難しさを感じるポイントです。また、柔らかいフィラメントほど、ノズルが詰まりやすいと言われます。固いフィラメントに比べて、押し出すときの力が先端部にうまく伝わりにくいのが主な要因です。
対策としては下記が挙げられます。
・ノズル内部をクリーンに保つこと
・スライサーソフトでのキャリブレーション、プロファイルに合わせた調整をすること
・印刷速度は遅めに設定すること
吸湿性が高い(糸引きの発生)
上記に加えて、湿気を吸いやすい点が課題になります。
吸湿してしまったフィラメントを使用すると、糸を引いたり、うまく造形ができないケースに繋がってしまいます。使用後には容器に保管したり、フィラメントケースの中に除湿剤を入れて使用する等の対策が求められます。
補足
参考商品
OVERTURE TPUフィラメント
オーソドックスなTPUフィラメント。手に入れやすい価格でカラーラインナップも豊富。執筆現在のAmazon評価も4.6とかなり高め。

フィラメントごとの特徴一覧
Bambu Lab A1 Miniに対応している4種類のフィラメントを比較した表が以下になります。
PLA (ポリ乳酸) | PETG (ポリエチレンテレフタレートグリコール) | TPU (熱可塑性ポリウレタン) | PVA (ポリビニルアルコール) | |
メリット・特徴 | ・手軽に印刷が可能 ・印刷の寸法が安定する ・コストが安い | ・強度、耐衝撃性が高い ・印刷がしやすい ・耐熱性が高い ・光沢感、透明感のある表現 | ・柔軟性が高い(曲げられる) ・耐摩耗性、耐衝撃性が高い | 水に溶ける →複雑な造形物の印刷に役立つ |
デメリット・注意点 | ・耐熱性が低い ・耐衝撃性が低い ・表面処理や塗装にあまり向かない | ・吸湿性の高さ(糸引きの発生) ・表面の傷つきやすさ ・紫外線に弱い | ・造形が少し難しい ・吸湿性が高い(糸引きの発生) | ・湿気にかなり弱い ・コストが高い ・サポート材の使用の知識が必要 |
用途 | ・雑貨 ・玩具、模型 ・大型の印刷物 →汎用性が高い | ・治具、工具 ・ギア、パーツ類 ・ケースなどの日用品 →強度が求められるもの | ・ケース類(スマートフォンカバー等) ・緩衝材、キャップ、パッキン ・スタンプ →丈夫さと柔軟性が求められるもの | サポート材 →他のフィラメントと組み合わせて、PVA素材部分のみ溶かすことで、複雑な形状を印刷可能 |
価格 | 安価 例)1kg:2000~4000円 | やや高価 例)1kg:2500~5000円台 | やや高価 例)1kg:2500~4000円台 | 高価 例)500g:3000~5000円台 |
強度 | あまり高くない | 高め(丈夫) | 高め(柔軟) | あまり高くない |
対応温度目安:ノズル | 190~220℃ | 220~250℃ | 210~230℃ | 190~220℃ |
対応温度目安:ベッド | 0~60℃ | 50~80℃ | 0~60℃ | 0~60℃ |
こちらについては、下記の記事でまとめています。
まとめ
以上、フィラメントについての解説でした。改めて、ポイントを整理します。
メリット・特徴
・柔軟性が高い
・耐摩耗性、耐衝撃性が高い
デメリット・注意点
・造形が少し難しい
・吸湿性が高い(糸引きの発生)
主な用途
・ケース類(スマートフォンカバー等)
・緩衝材、キャップ、パッキン
・スタンプ
最後までご覧いただき、ありがとうございました。よろしければ、下記の関連記事もどうぞご覧ください。
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