コーヒー本

【書籍レビュー】Coffee Fanatic 三神のスペシャルティコーヒー攻略本|理論化された焙煎・ドリップにおける「味の仕組み」について

2024年12月30日

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Coffee Fanatic 三神のスペシャルティコーヒー攻略本 外観

こんにちは、たけもとです。

今回ご紹介するのは「Coffee Fanatic三神のスペシャルティコーヒー攻略本 」という書籍。文庫本とは思えない圧倒的な情報量に、思わず驚愕した一冊で、今回レビューさせていただきます。

スペシャルティコーヒーへの理解を深めたい

焙煎を始めたので味の決め手を知りたい

ドリップをより理論化してできるようになりたい

そんな方におすすめしたい一冊です。内容が専門的ですが、文庫本ということで置いておきやすく、それでいてコーヒーの奥深さをじっくり解説している本になります。ぜひ、最後までご覧ください。

概要

著者について

著者は三神亮 氏。

2014年からワールドロースティングチャンピオンシップ日本代表焙煎コーチ、ジャパンバリスタチャンピオンシップ認定審査員、COE認定審査員を務められ、コーヒー業界でのコーチ業から、抽出焙煎、産地訪問等の多岐の業務で活躍されています。

新百合ヶ丘の自家焙煎コーヒーショップ「Roast Design Coffee」にて、コンサルタント/品質設計のほか、店舗のブログを執筆されています。プロファイルを交えた焙煎の考察や、コーヒー産地の詳細の解説等々、専門的な内容が多いですが、コーヒーの世界の奥深さに触れられる、魅力あふれるブログです。

本の概要

「Coffee Fanatic三神のスペシャルティコーヒー攻略本 」の主な構成は以下の3つです。

書籍の構成
①スペシャルティ概要
②焙煎
③抽出

構成のそれぞれにおいて、専門的で充実した解説がなされています。

本の帯には「多様なコーヒー業務を経験してきた筆者が、美味しいコーヒーを飲んでもらうべくう、色々な角度からコーヒーを語りつくす」とのことで、上記のポイントで文字通り語り尽くされた1冊となっています。

以下レビューにて、それぞれのポイントについて詳しく触れていきます。

レビュー

詳細・要点整理

①スペシャルティ概要

流通や生産処理の目線での解説が中心となっていました。

流通段階からどのように価値が生じ、それが「スペシャルティ」に繋がっていくのか、解説されています。また、ウォッシュドやナチュラルの加工についても、詳しく書かれており、具体的な工法・味わいの傾向を掴むことができます。

なお、豆の味わいについては、国ごとではなく「品種ごと」での解説となっています。(例えば、コロンビア、ではなくその中で栽培されている「ウシュ・ウシュ」という品種について解説されている)要するに、情報の粒度が細かいのです

そのため、コーヒーの専門店等で品種まで記載されている豆を買ったときに、ようやく味についての学び→実践ができる形になります。(国単位での味の特徴を知りたい方は、「図解コーヒー1年生」等がおすすめです。)

また、一つ押さえておきたい単語が「マイクロクライメット」もしくは「テロワール」という語。

これは土地ごとの固有の気候により育まれた、その土地の風土に根差した味の特徴のこと。コーヒーだけでなく、ワインやお茶でも使われる語のようです。上記に挙げたブログにおいてもテロワールについて触れており、スペシャルティコーヒーに触れる際に、意識しておきたい語だなと感じています。

②焙煎

まず、焙煎の基本的な考え方が、以下の一文になります。

コーヒーの焙煎とは生豆に熱を加えTaste(テイスト)を発達させることである

このテイストに関して、相反する要素として挙げられていた下記二つがポイント。

酸味/フレーバー:軽い質感、スムースで水分が多めなテクスチャー
甘味/質感:重い質感、クリーミーで粉を感じるテクスチャー

コーヒーの味はすべて理想的なバランスが取れた状態、すなわち完璧なバランスというものは存在せず、ある個性を生かした場合は別の個性が控えめになります。そのため何を求めた・生かした焙煎にするのか、ポイントに狙いを定めて焙煎するのが重要、ということですね。

こうした焙煎の概要を踏まえたうえで、焙煎機の解説から、実際の焙煎方法まで詳しく触れています。例として、焙煎機の方式について以下にまとめます。

方式直火式半直火式熱風式
①伝導
(熱いものに直に触れる)
②対流
(空気などを介して熱を伝える)
③輻射
(電磁波で熱を伝える)
メリットコーヒーのテイストが強くしっかり感じられる※直火式と熱風式の中庸焼きムラが少なく短時間で仕上がる・焦げにくい
デメリット焦げ臭や異味が付着しやすい※直火式と熱風式の中庸テイストの強さが左記の2つに比べると劣る

そのうえで、焙煎の具体的なステップ(投入量、排気量、投入温度設定など)を、非常に細かく解説されています。かなり具体的ですので、気になった方は実際に書籍にてお試しください。

③抽出

まず、抽出の基本的な考え方が、以下の一文になります。

抽出とはコーヒーのTaste(テイスト)成分を水に移動させることである

これは他のコーヒー書籍でも同じようなことが言われており、コーヒーは水とコーヒー豆のたった二つの材料から出来上がっていることを、改めて認識したいポイント。

そして重要なのが、味の抽出順」×「Over(過抽出)かUnder(未抽出)か」で味が決まるという視点です。

味の抽出順
下記の順で味が抽出される。
①酸味
②甘味
③苦味

・Over Extraction(過抽出):抽出が過剰で、苦味や雑味が主体的
Under Extraction(未抽出):抽出が不足し、酸味が主体的

コーヒーの味の要素としては、豆の粒度(挽き目)、お湯の温度、圧力、抽出頻度・スピードなどの要素が挙げられます。(本記事ではこれらの要素をいったん「人的要素」と仮称します。)この人的要素ごとにOver(過抽出)かUnder(未抽出)かが決定づけられます。一つの例として、挽き目に関する情報を以下整理します。

挽き目細かい粗い
抽出Over(過抽出)Under(未抽出)
フレーバーはっきり穏やか
テクスチャークリーミー、シロッピーな粘性のあるテクスチャースムース、ラウンドな滑らかなテクスチャー

「豆そのものが持つ味わい」に対して、この「人的要素」で決定づけられた味わいが積み重なり、コーヒーの味が決まるということですね。

感想

まずスペシャルティ概要について。巷で話題になっているスペシャルティコーヒーそのものの概念、COEやテロワール等の単語についての理解を深めることができました。豆の解説についても、国名や産地(エチオピアモカ、等)での表記が一般的なところ、品種レベルでの解説となっており、ティピカ、ブルボン、カトゥーラといった品種以外にも非常に多くの品種に細分化されているんだな、と奥深さを感じたポイントです。

単語が増える=概念が増える、ということであり、情報を検索する際にも、より具体的な語を使うことで、より詳しい情報に触れることができます。まさに知の啓きを感じた部分です。

焙煎については、私自身が持っていないことが悔やまれるのですが、焙煎機を手に入れたらぜひ実践したいと思う内容ばかりでした。というのも、焙煎による味の違いが具体的に示されており、その実践の中で味の変化を学べそうだと、持っていない身からしても感じるほど充実していたからです。

知人が焙煎機を手に入れて勉強中なのですが、彼との焙煎についての話になる際に、この書籍の情報を提示するシーンがあります。焙煎の仕方がどのように味にかかわってくるのか、個人の体験としても味わいたいな、と焙煎機が欲しくなってきます。

最後に、抽出について。ドリップは普段良くしているので、抽出の情報は実践の中で学びを深められる内容で非常に勉強になりました。繰り返し実践の中で、理論を体にしみ込ませていきたいところです。

総じて、「味の仕組み」についての解像度が高く、これまで触れてきたコーヒーの味の決め手の知識が、より精緻に解説されていたのが、感動したポイントです。同時に、コーヒーの流通、焙煎、抽出と、実際にコーヒー業界で仕事をされている方はこうした理論のもとコーヒーを作られているのだなと、これまた感動したポイントです。

まだまだ書籍の情報はうまく使いこなせる身ではありませんが、日々のコーヒーとのかかわりの中で読み返して、少しずつ奥深い世界に足を踏み入れたくなる一冊でした。

おすすめの方

おすすめの方
・焙煎で、味を決める要素について知りたい方
・ドリップにおける味の仕組みを理論的に知りたい方
・産地について、より詳しく細分化された情報に触れたい方

まとめ

以上、「Coffee Fanatic三神のスペシャルティコーヒー攻略本 」についてのレビューでした。

およそ600円の文庫本とは思えない圧倒的な情報量に、値段以上の価値をひしひしと感じます。文庫本という紙面の狭さの関係で情報が圧縮されていることもあってなのか、密度が非常に濃い1冊です。

一方、基本は文字ベースであるため、個人での情報の整理が必要になるかと思います。マトリクス表や図解等でより系統化され、専門書として出版されたらより使いやすくなるだろうなと感じました。(著者自身もコスト面で難しかったということでおっしゃってました)

なお、執筆現在、Kindle Unlimitedでの借り放題対象になっています。(私も1年くらい前にKindle Unlimitedで借りて、そこから手元に置いておきたいと、購入した記憶があります。)加入者の方はまずはレンタルから、いかがでしょうか。そして、まだ未加入の方も、Kindle Unlimitedは価格に対して得られる情報量が段違いのサービスなので、登録されるのも非常におすすめです。(スマホからでも読めます)

なお、Fanaticという英単語は、「深淵の者」という意味だそう。覗くどころか入っちゃってますね。気になった方はぜひお手に取ってみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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